EL34研究所

EL34 はとてもポピュラーなオーディオ用真空管です。傍熱管、五極管と呼ばれるタイプでオーディオ用アンプの出力管としてとても使いやすくオーディオ用アンプの出力管としては最も多く使われている真空管とも言えるでしょう。

US8ピンのオクタルベースで EIA登録名は 6CA7、ロシアでは 6П27C(6P27S)とも呼ばれます。

EL34 は 800V近いプレート電圧を掛けることができ、AB級プッシュプルで使うと(2球で)90W もの出力を取り出すこともできます。10Wのヒーター、25Wのプレート損失の真空管としては驚異的な高能率と言えます。

その一方で三極管接続時にも優れた特性を示し 350V 程度のプレート電圧で A級シングルで用いて 5W弱の出力を取り出すこともできます。

オーディオ用真空管としては初期のころは WE300B や RCA2A3 などの直熱三極管が用いられ、その後五極管、傍熱管五極管などが開発され、EL34 は 1950年代に開発された比較的設計が新しい真空管です。

6L6系と呼ばれる規格の近い真空管の一派で回路を工夫することで 6L6、6550、KT88 などと差し替えて使用することも可能です。

そんな銘球EL34 は 21世紀になった現在も需要が多く東欧国や中国で製造が続けられています。法外に値上がりしているヴィンテージ管を探さなくても品質の安定した現行管で優れた音質が得られるので初心者からオーディオ仙人までオススメできる真空管です。

このサイトでは EL34 の魅力について研究したいと考えています。

EL34 の歴史

EL34 はオランダPhilips系の英国企業Mullard によって 1953年に開発されました。Philips-Mullard の技術力を結集して米国RCA の 6L6 をターゲットに開発され、その優れた性能から Philips系各社のみならず、米国企業(RCAの親会社GEなど)も含めた世界中の企業で互換球が製造されました。ベースとなったのは 1947年に Philips が開発したオクタル9ピンベースの EL60、もっと遡ると 1936年開発の EL5/EL61、1938年開発の EL12 になります。耐圧などは違いますが電気的な特性はほぼ同じです。

1950年代には Mullard の自社工場で生産されていましたがその後は需要の増大とともに共産圏国の工場で作られるようになりました。当時は工業後進国だった日本でも欧州企業の技術協力で生産され、欧米企業のブランドで出荷されていました。松下生産の GE販売品、日立生産の Raytheon販売品などはいまでも流通しています。

東ドイツにあった RFT社製の EL34 は一つの完成形と言え、西ドイツTelefunken や西ドイツSiemens などのブランドで売られている EL34 は実は RFT社が製造し OEM供給していました。ドイツValvo、ドイツRSD など数えきれないほどのブランドで売られています。

米国でも EL34 の互換球が作られました。米国GE製のものが有名でただコピーするのではなく元は五極管だった構造をビーム管で作りながらも EL34 の特性とし、デザインでもガラスをかなり膨らませたデザインでいかにも米国人が好みそうな製品として仕上げられました。

21世紀に入った現在でもロシア、中国、チェコなどで製造されています。真空管の場合は販売会社に対して OEM供給することが一般的なため、製造工場と販売ブランドが一致しません。よって様々なブランドで売られていますが実は同じ工場で作られていたり、また同じブランドのものでも時期によって工場が違ったりします。

現行管の EL34 は見た目にあまりこだわりが無いので、構造を見るとひと目で製造工場がわかります。もちろん、製造工場がわかったからなんだということは無いのですが、同じ工場で作られたものが販売するブランドによって価格帯が違ってくるのでプリントされたブランド名にこだわりがなければ人気のないブランドのものを求めることで安く買えます。

ヴィンテージ管

EL34 は絶大な人気があるためヴィンテージ管の需要も旺盛です。これに目をつけた悪徳業者が横行し、本来は価格の安い現行管やプチ・ヴィンテージ管に、ヴィンテージ管風のプリントを付けてヴィンテージ管として高い価格で売っていることがよくあります。

真空管を取り扱う店舗でも必ずしも目利きがあって売ってるわけではないので、商社経由などで入荷し偽物であると知らずに高値のプライスタグを付けて店頭に並べていることがあります。

ヴィンテージ管を探し求めてネットオークションで探す人も多いと思いますが悪徳業者にとっては絶好のカモです。悪徳業者だけでなくヴィンテージ管と信じて店頭で買ってしまった素人が意図的に、もしくは意図せずに出品していることもあるので目利きの自信がなければ手を出さないのが良いでしょう。

ヴィンテージ管を使いたいかどうかは個人の趣味趣向なのでなんとも言えませんが現行管でもとても優れた製品があり、ヴィンテージ管の何分の一かの価格で手に入りますから EL34 に限って言えばヴィンテージ管を使うメリットは特性面、音質面ではあまり無いと言えます。

2000年代初頭に作られていたロシアSvetlana(Cロゴ、SED などと呼ばれます)の EL34 は現行管の中では少し高めのプライスタグが付けられていますが往年のヴィンテージ管と遜色ない音がするのでオススメです。同じ Svetlana のブランドでも Sロゴの製品はロシアSovtek と同じ工場で製造されており販売しているのは米国の企業です。(倒産した旧Svetlana社のブランドを買った会社です)

買ってきた真空管をアンプに挿してすぐ評価するのは好ましくありません。他の電子部品と同じでエージングが必要です。毎日聴いているとある日突然、アンプが変わってしまったんじゃないかというほど音質が変わることがあります。ブランド別に聴き比べをするならきちんとエージングされた状態で比較するべきでしょう。

相場など

ブランド 価格帯(1本) 価格帯(ペア) 製造工場 備考
JJ Electronics 約2,000円 約4,000円 スロヴァキア旧TESLA 頭が丸い
SED 約7,000円 13,000~15,000円 ロシア旧Svetlana 旧Svetlana と同じ
Svetlana - 5,500円 ロシアRefrektor 新Mullard、Sovtekなどと同じ工場
※:この相場は、記事執筆時点(2015年7月)時点のもので、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で急激な原材料不足となっており、2023年初頭には上記の 2倍以上になっています。価格が高いとは言ってもモノ自体が不足しているので、2023年現在は、販売されていないと考えたほうがいいです

EL34 を使った代表的なアンプ

1960年代から 1970年代に掛けて多数のオーディオ用アンプが出力管に EL34 を採用しました。代表的なアンプにまとめてあります。

雑誌掲載例

MJ無線と実験 2014年9月号(No.1099)

3結プッシュプルステレオ。岩村保雄氏設計。初段12AY7、P-K分割型位相反転段12AU7 を用い無帰還でまとめたオーソドックスな設計。自作初心者でも作りやすい。

出力トランスに染谷電子 A76-8K48P を採用。出力10.5W。

管球王国 Vol.5 2007年夏号?

プッシュプルステレオ。上杉佳朗氏設計。

ウェブ掲載製作例

ウェブでも EL34 を用いたアンプの製作記を書かれてる方がたくさん居ます。見つけたものをピックアップしました。Web製作例にまとめてあります。

その他コンテンツ

勝手に鑑定団

Web で見つかった EL34 の画像を勝手に鑑定します。鑑定結果の真偽はわかりません。